令和 4年 8月 吉日
(公財)合気会公認道場
ひとみ幼稚園長束道場
村田義昭
1.予知すること
私は定年まで損害保険会社の損害調査部で11年間、お世話になっていました。
当然、毎日のように企業や個人の方から「つい、うっかり…!」や「つい、誤って…!」、怪我をした、怪我をさせた、自分の物や他人の物を壊した…といった事故の報告を受け、その状況や被害額などを調査して対象ならば支払う、といった対応をしていました。
またその前、50才で早期退職しましたが、製鉄機械、タービンやコンプレッサーなどの産業機械メーカーで30年間余り、主として製造・生産技術の業務に従事していました。その間も企業内教育を受けているにも関わらず、時々同じように怪我やチョンボ(誤作のこと)をした、というような事故が発生していました。
何故、こうした怪我や事故が多いのでしょうか。しかも、各々の持つ体質でしょうか、1度では終わらない事故多発者や企業が結構多いのです。
企業における怪我、即ち労務災害を例にその原因を大別すると、作業者の不安全行為によるもの88%、設備の不備などによるもの10%、天災などその他が2%、と云われています。つまり、作業者の不安全な行為、即ち横着をして手を抜く、ボーッとしたり他のことを考えたりの集中力不足、また焦りや勘違い…などの人的要因が圧倒的に多いのです。その対策として、企業では「人間は、誤りを犯す」ことを前提として、「ヒヤリ!ハッ!と」運動、5S(整理・整頓・清潔・清掃・しつけ)運動や危険予知(後述します。)などの安全教育、実務的な作業標準の実施など不安全行為の撲滅のための諸施策、また安全装置の設置などといった安全環境の整備などを実施しています。
しかし、必要性があろうとも、一般社会では対象が広過ぎる、人々を規制するなどいろいろと制約があり、総ての場において手を打つわけには参りません。
そうなれば、人々の意識・認識には非常にバラツキがあり難問ですが、大切なのは一人ひとりの「自分の身は自分で守る」という安心・安全に対する意識・認識の高さです。
中でも「こうやれば、こうした危険が生じる、な!」「ここは、このような危険が潜んでいる、な!」といった先に潜む危険要素を読む、即ち一歩先の危険を予知する心掛け (=KY、KIKEN YOTI 〜 近年の「空気が読めない」ではなく、です! )が非常に大切となってきます。
「一寸先は闇」、仮にも武道・武術を稽古する者は相手の出方を読む・察する心掛けや先の危険を察知する心掛け、例えば、「見通しの悪い曲がり角では出会い頭の衝突を避けるため、スピードを緩めて大回りをする」、「横断歩道などでの信号待ち中、当たられても大丈夫なように最前列に立たない」…など、が必要です、よ!!
2.気配を消すこと
だけれども、前段の予知することとは相反することになりますが、武術の世界では、相手にこちらの動き、呼吸や心理などを読まれたら当然のことながら勝負あり、です。
従って、相手にこちらの動き、呼吸、心理などを読まれぬこと、別な言い方をすればこちらの気配を消すことが絶対に必要、となります。
こちらの動きや思いに対して先回りされれば、全く動けぬことになります。 スポーツ界の動きの逆を取る、といった相対的な対応、フェイントなんて初歩の初歩なんです。
日本の武術には、「さあ、いくぞ!」の構えなく何気に動く、また瞬間的に力を抜くなど己の気配を消して一挙動で相手を抜き去る、といった高度で絶対的な技術があるのです。ただ、現在は退化してしまっているので、あったというべきでしょうが…!!
〜 興味のある方は、古武術研究家の甲野善紀氏のDVDなど市販されているので、ご一読方!
従って、基本に添った動き、体の精妙な使い方とともに何気に動いて相手に抵抗感を与えない、即ち、己の気配を消し、相手にとっては全く予測できない動き、思いもよらぬ動きができることは武術である限り、絶対に必要なのです。
今の私には遙か彼方ですが、理想の合気道として、また今後の課題として考えています。
以上
(文責 : 村田義昭、【ちょっとお目を拝借-2】を、R4.8.15.に補筆)
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